今回は先日2018年5月27日に東京競馬場で行われた東京優駿・日本ダービーで19回目の挑戦だった福永祐一騎手を見事にダービージョッキーに導いたワグネリアンについて取り上げます。
ワグネリアンの血統・プロフィールやこれまでの戦績はもちろん、次走はどのレースを目指すのかや馬主、ワグネリアンの意味などあれやこれや調査しましたので、どうぞご覧ください。
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ワグネリアンのプロフィールと強い戦績
ワグネリアンは2015年2月10日に北海道勇払郡安平町にあるノーザンファームで産まれました。
厩舎は関西・栗東の名門で最近では昨年2017年にはシュヴァルグラン でGⅠ・ジャパンカップを制覇し、日本ダービーは一昨年2016年に川田将雅騎手騎乗のマカヒキで既に勝利するなど数々の名馬を育てている友道康夫厩舎に所属しています。
ワグネリアンは新馬戦の段階から既にダービー出走を目指しているかのように、ダービーから逆算して馬に無理をさせず、十分なレース間隔を取った上で出走していきます。
夏の中京開催唯一の中距離の新馬戦を選択した陣営は2017年7月16日の芝2000m新馬戦でワグネリアンをデビューさせ見事に勝利を飾ります。
2戦目は2ヶ月後の9月16日に阪神競馬場で行われた芝1800mのオープン特別・野路菊ステークスで単勝1.9倍の人気にこたえて優勝します。
続く3戦目も野路菊ステークスから2ヶ月後の11月18日に東京競馬場で行われた芝1800mのG3・東京スポーツ杯2歳ステークスに出走、単勝1.4倍と圧倒的人気に支持され、見事に勝利し初重賞制覇となりました。
ここで通常であれば2歳頂上決定戦で12月に行われるG1・朝日杯フューチュリティステークスや昨年2017年からG1に昇格したホープフルステークスを目指すところですが、陣営は翌年の始動戦を弥生賞に定めて早々にワグネリアンを放牧に出します。
翌2018年1月下旬に放牧から栗東トレーニングセンターに戻ったワグネリアンは順調に調整を進め、3月4日に中山競馬場で行われた2000mのG2・弥生賞に出走するものの2着に敗れ連勝は3でストップしました。
続く4月15日に中山競馬場芝2000mで行われたG1・皐月賞では有力馬の回避などもあって単勝1番人気になりながら7着に敗退し、専門家などのレース回顧では福永騎手が大事に慎重に乗りすぎた結果ではないかと言われるようなレースとなってしまいます。
しかし迎えた5月27日に東京競馬場芝2400mで行われた日本ダービーでは福永騎手が8枠17番という枠順の影響もあってか皐月賞とは異なる積極的な騎乗を見せ、単勝5番人気と人気を落としたところからの見事な勝利を飾りました。
ワグネリアンの勝利に福永祐一騎手が感動のコメント!
ワグネリアンにはデビュー以来すべてのレースで福永祐一騎手が騎乗しています。
ダービー19回目の挑戦で遂にダービージョッキーとなり男泣きをした福永騎手は、「ダービー制覇は父の悲願・福永家の悲願でした。良い報告ができそうです。」と父・福永洋一元騎手も果たせなかったダービー勝利に対してコメントしました。
天才と言われた父でさえも7回挑戦して3着が最高着順、福永騎手自身も過去にはキングヘイローやワールドエース、エピファネイアなど数々の有力馬に騎乗したものの勝てなかっただけに感慨深いものがあったに違いありません。
日本ダービー馬ワグネリアンは二冠を目指す?次走は菊花賞?
見事にダービー馬に輝いたワグネリアンの秋の目標ですが、友道調教師はワグネリアンの菊花賞の距離芝3000mに対しての適性から今のところは、別路線を歩むのではないかということを明らかにしています。
その一方で同じ友道調教師が管理していてダービーで4着馬になったエタリオウや皐月賞馬でダービーで逃げて惜しくもワグネリアンにゴール前で半馬身差かわされて2着に敗れたエポカドーロは菊花賞を目指す方向となりそうです。
ワグネリアンが秋にどのレースを目標とするかに注目です。
ワグネリアンの血統は?父馬は?母馬は?
見事にダービー馬となったワグネリアンは父はディープインパクト、母はミスアンコールという血統です。
父・ディープインパクトの競争成績は通算14戦12勝2着1回失格1回で、勝てなかったのは国内では2005年G1・有馬記念でハーツクライの2着に敗れた時と唯一の海外レースとなった2006年フランスG1・凱旋門賞(3着・後に失格)のみでした。
重賞はG1で7勝(2005年皐月賞、2005年日本ダービー、2005年菊花賞、2006年天皇賞・春、2006年宝塚記念、2006年ジャパンカップ、2006年有馬記念)、G2で3勝(2005年弥生賞、2005年神戸新聞杯、2006年阪神大賞典)と通算11勝しています。
2006年のグランプリ・有馬記念で見事に有終の美を飾り惜しまれつつ引退したディープインパクトは翌2007年から生まれ故郷である社台スタリオンステーションで種牡馬をスタートさせました。
産駒が競走馬デビューした2010年から3年目を迎えた2012年から6年連続でリーディングサイアーとなるなど既に種牡馬としても超一流、父・サンデーサイレンスの後継種牡馬の位置は確固たるものとなっています。
産駒の重賞勝利は2018年5月だけでもG1・NHKマイルカップ(ケイアイノーテック)G1・ヴィクトリアマイル(ジュールポレール)そして日本ダービーとG1を3勝、通算では90頭で170勝(G1は31頭で42勝)しています。
代表的な産駒としては、牡馬ではマカヒキ、キズナやサトノダイヤモンド、牝馬ではジェンティルドンナ、ショウナンパンドラやミッキークイーンなど錚々たる顔ぶれです。
母・ミスアンコールの現役時代の競走成績は通算9戦1勝2着1回と目立った成績は残していないものの、そもそも2006年のセレクトセールで1億1760万円で落札されるような良血馬であったことから引退後は繁殖牝馬としての生活に入りました。
ワグネリアンの馬主は?
ワグネリアンの馬主は父・ディープインパクト、母・ミスアンコールと同じく金子真人ホールディングスです(当初は個人馬主として登録、後にホールディングス化)。
なお、母父・キングカメハメハ、母母・ブロードアピールまで含めてすべて金子真人ホールディングスの所有馬となっているのですが、こういった例はなかなかお目にかかることができません。
金子真人オーナーは東証1部に上場していて神奈川県横浜市に本社がある株式会社図研の創業者で現在も社長を務めていて、ワグネリアンをはじめとして金子真人ホールディングス所有馬の勝負服は図研のコーポレートマークの配色が使用されています。
馬主となったのは1995年からでそれまでは競馬とはまったく縁がなかったところからのスタートだったものの異例ともいえる活躍を見せ、2015年には個人馬主としてははじめてとなる旧八大競走制覇を果たしました。
旧八大競走とは桜花賞、オークス、皐月賞、ダービー、菊花賞、天皇賞・春、天皇賞・秋、有馬記念の現在のグレード制が導入される以前から格式が高かったレースのことを言いますが、それ以外にも多くのGⅠレースを制覇しています。
2018年5月末現在で未勝利の平地GⅠレースは高松宮記念、マイルチャンピオンシップ、朝日杯フューチュリティステークス、ホープフルステークスのみという状況になっています。
ワグネリアンの意味は?
ワグネリアンは「リヒャルト・ワーグナーのファン」という意味です。
リヒャルト・ワーグナーはドイツの有名な19世紀のクラシック作曲家で、「ニュルンベルクのマイスタージンガーより第一幕への前奏曲」などはタイトルは知らないまでも曲を聞けば、スマホゲーム「グランブルーファンタジー」のCM曲としてどなたでも一度は聞いたことがあるではないでしょうか。
その他にも歌劇「ローエングリン」の劇中歌でもある結婚行進曲、「さまよえるオランダ人」序曲、「タンホイザー」、「トリスタンとイゾルデ」など数々の名曲があります。
ベートーベン、モーツァルトなどそれぞれの作曲家のファンはもちろんいるわけですが、情熱的で劇的で壮大な音楽を作り出したワーグナーに対しては熱狂的になるファンが多く、ワグネリアンと言われるようになりました(日本語だけでなく英語やドイツ語としてももちろん存在します)。
金子真人オーナーがワーグナーについて語っているインタビュー記事などは今回見つけることはできませんでしたが、嫌いであれば期待馬に名付けることはないであろうことは明らかであり、ワーグナーの音楽が好きであることは間違いないことと思います。
ダービー終了後は関西・栗東トレーニングセンターには戻らず東京競馬場から福島県にあるノーザンファーム天栄にそのまま移動したワグネリアン。
秋からの新たな戦いへ向けて、まずは英気を養った上で、更に成長して力強くなったワグネリアンは、その勇敢な走りを競馬ファンに見せてくれることと思います。